球体関節人形製作記(その1)
私は球体関節人形が好きです。2000年に大分市美術館で始まった、「四谷シモン‐人形愛」のポスターを見て衝撃を受けて以来、ずっと独特のエロチックな感じがある、球体関節人形に興味を持っていました。思えば、シュヴァンクマイエルやクエイ兄弟などの作品が好きなのも、この四谷シモン氏もポスターに載っていた「解剖学の少年」の姿に感銘を受けたからかもしれません。
・・・とは言うものの、その当時は中高生、不気味が勝って、結局イベントには足を運べずじまいでした。数年経って、あの時のアレはなんだったのだろう、と自分なりに調べ直し、今に至ります。
人形の写真集を買ったり、動画を見たり、本を読んだりはするものの、今まで球体関節人形そのものを買ったことは一度もありませんでした。田舎なので人形関係のイベントなどは前述の「人形愛」以来開かれたという話は聞かず、勿論専門店などもありません。通販を覗いてみても、好みの人形は恐ろしく高価で、万年金欠の私には手が届きません。何より、人形は欲しいのですが、量販品を買って自分の人形とするのは何か違う気がしていたのです。
そんなわけで、今まで自分の中で球体関節人形が欲しいという思いを燻らせていたのですが、我慢が利かなくなり、なんとか安価で好みの人形が手に入らないかと調べたところ、石粉粘土で自作するという方法に辿り着きました。
参考にできそうなサイトは幾つかありましたが、アイミさんの「球体関節人形-黒耀の鏡-」の方法に従うことにしました。
参考として購入した本は、アイミさんの「はじめて作る球体関節人形」と、「吉田式球体関節人形制作技法書」です。
目標は、低価格、高品質! 粘土をこねるのなんて、中学生時代の図工の時間以来ですので、顔が怪物になってしまうかもしれませんが、失敗しても泣かないと心に決めて、とりあえずチャレンジです!
- まずは、材料の準備です。近くの手芸店で石粉粘土を、その他の発泡スチロール球や芯材の軽い粘土、その他諸々は100均でまとめて買い込みました。小学生時代にミニ四駆用に使っていたピンバイスやラジオペンチを押し入れの奥から引っ張り出します。
始めてですので、設計図は「はじめて作る球体関節人形」に付属のものを使わせて貰うことにしました。40cmサイズでしたが、60cmサイズの人形が欲しかったので、拡大してべニヤ板に張り付け、上からラップを貼ります。
- 設計図に併せて、トレーシングペーパーでなぞって型紙を作ります。
次に芯材作りですが、アイミさんの方法は、サイトでは発泡スチロール塊の削り出し、本では段ボールに軽い紙粘土を巻いて作るという二種類の方法が紹介されていました。折角なので、両方をハイブリットして、段ボール芯に発泡スチロールを重ね、その上から紙粘土を巻いてみることにします。
切り終わった段ボールと発泡スチロールを、
組んで芯の芯を作り、この上から紙粘土を巻きつけます。 -
軽い紙粘土というものを初めて使ってみましたが、重みがなくてふわふわしていて、どうにも変な手触りです。芯をしっかり綺麗な形で作れるかが、今後の作業の成否に大きく関わってくるとあったので、慎重に気合いを入れて、発泡スチロールの上から粘土を巻きつけます。
大雑把な形が出来上がりました。手足の芯には割り箸を束ねたものを使うとあったのですが、勿体無いので、壊れた竹刀の竹を芯に使ってみましたが、あとから削ったり切ったりするのにえらく手間がかかって後悔しました。 - いよいよ正念場、できた芯にサランラップを巻いて、石粉粘土を巻きつけていきます。体の凹凸や、腕足はこの時に細かく作りこみます。
-
三日ほど乾燥させたら、表面の石粉粘土が固くなるので、鋸で切断して、中の芯を取り出してしまいます。苦労して作った芯がお役御免になってしまうのは寂しい気分です。作業の合間をみて、ころころと関節球も作っておきました。発泡スチロール球に粘土を巻いて球にするのですが、フリーハンドで真球に近い形に丸めるのは、中々神経を使います。
作業に並行して、顔も作っておきました。人形はなんといっても顔が命です。随分時間をかけて試行錯誤して、少しづつ人形らしい顔になってきました。
ツンとした顔の女の子の顔を作りたかったのですが、こうして見る何だか怒っているように見えます。左右のバランスも悪いし、まだまだ調整が必要のようです。中学生時代にも粘土の顔像を作ったのですが、その時よりは少しは上手くなったでしょうか? 粘土を盛ったり、乾かして彫刻刀で削ったりを何度も繰り返して、少しづつ理想の顔に近づけていきます。 -
まだまだ作業は全然途中なのですが、一度パーツを人型に並べてみました。
関節の受けもできてないし、手足は調整がまだまだです。胴体も首から鎖骨にかけてのラインがのっぺりしているので、もっと可愛らしく削らなければいけません。問題は山積みですが、こうして並べて、人形としての形が整ってくると、何だか嬉しくなってしまいます。
殆ど出たとこ勝負で始めた球体関節人形製作ですが、やってみれば思ったよりもできるものだなあ、という感じです。
これからは、目、手足の指、全体の調整、肌の塗装と、完成品の見栄えに影響する作業ばかりが控えています。
気合いを入れて、私好みの可愛い人形を仕上げてみようと思います!