米一粒仏七体

個人的備忘録です

藤原忠行顛末記

 ブログを開設したのはいいのですが、放置するのも何なので、機能テストついでに写真を上げたりしてみます。
 昨年の11月の話になりますが、私が保管していた田舎の脇差の話などを少々。

 写真は、我が田舎、佐伯市弥生町の蔵から出た錆身の脇差
 長らく私の押し入れの奥に封印されていたのですが、居合の師に目釘を抜き方などを習い、分解してみることに。
 すると、茎に「藤原忠行」の銘を発見しました。
 すわ名の在る名刀か! という思いもありましたし、刃物が錆びたままなのは非常に悲しいので、貯金を重ねて、思い切って研ぎに出すことにしました。

 研ぎに出すと言っても、幾つもの手続きが必要です。
 まず、発見届けを地元(佐伯市)の警察に提出。
 存在は親族一同ずっと周知のものでしたが、つい先日見つけたように警察には報告。
 田舎の箪笥などに刀がしまいこまれていることはよくあるらしく、とりあえずつい先日見つけたように話すことは恒例らしいです。
 それから、大分市で開かれる刀剣審査会で、美術品登録を取得。
 刀剣審査会の開催日は平日、そして開催場所は県庁。今の職場じゃないですか!!!
 審査会当日は幸運なことに天気は崩れがち。
 傘にすっぽりと包んで持ち込み、昼休みに審査会に提出しました。
 
 偶然ですが、行きのエレベーターに鑑定士の先生と二人っきりで乗り合わせました。
 やっぱり、その時は初対面で、鑑定士の方とは知らなかったのですが、やっぱり物腰が違うんですよ。居合の高段者の先生とお会いする機会は何度もありましたが、背筋の伸び方がそっくりで。
 刀は持っていらっしゃりませんでしたが、「あ、これは関係者だ」とピンときました。

 その先生に、「江戸後期の豊後刀です」との鑑定を頂き、「研げばいい刀になりますよ」とのお墨つきまで頂きました。
 期待高まる!!

 

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全体図

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藤原忠行の銘

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鍔・柄・はばき・切羽・目釘

 

 研いでやろう! と思って思い立って、一番苦労したのが、研ぎ師の先生の連絡先でした。
 大分の竹町商店街に「刀剣研ぎ」なんて看板は、勿論ありません。
 インターネットを探せば、それは、有ります。見つかることは見つかるのですが、どうも風情がない。
 そりゃあ現在貴重な研ぎ師さんですが、刀を送って相場のお金を振りこんで、というのはどうも風情がありません。
 値段も脇差で10万以上と非常に高額で、依頼するのを躊躇っていました。

 で、いつもの如く居合の師に相談したところ、大分にお住まいの研ぎ師の先生をご紹介いただけることになりました!
 臼杵市にお住いの研ぎ師の先生のお宅は随分山奥で、先生もお会いするのは10年ぶりぐらいとのこと。
 何度も迷いながら辿り着くと、「庵」と形容するのが相応しいような、素敵なお住いでした。
 奇しくも、刀を発見した弥生の実家そっくりの県南の山奥、苔むした石灯籠並ぶ美しい旧家。

 研ぎ師の先生はご高齢ながら矍鑠とされた方で、相場より遥かに安く研ぎと白鞘の製作を請負って下さいました!

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 そして、一月後、見違えるように美しく研ぎ上がった愛刀が!
 手入れの仕方を教えて頂き、(打ち粉まで頂いてしまいました!)藤原忠行の来歴などを教わりました。
 
 私の田舎からはこの脇差の他に、長刀の鞘も別に出ているので、少なくとも過去にはもう一本刀があった筈なのです。
 一本戦時中に出征に行く方に渡し、その方が戦地で無くしてしまったという話は聞いていたのですが、他にも無いのか非常に気になるところです。
 集落にはまだ放置されてる刀がありそうですし、また錆身の刀を入手できた時には、是非先生に研ぎをお願いしようと考えています。

 

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白鞘と刀(はばきは元々あったものです)

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全体図。研ぎ師の先生には刃紋が奇麗に出たと言って頂けて歓喜しました。


 私は、基本的には刀は振ってなんぼの実用品と考えていますが、これは祖父の形見の品でもありますし、丁寧に手入れをして保管しています。
 とりあえず仏壇に供えて、手を合わせておきました。
 次は刀掛の鹿角を探そうと思っています。現在弥生の道の駅では鹿角が山ほど売りに出ていますし、実家の近くの方が罠で山程鹿を取って、頭を畑に埋めているのも発見しました。
 新種の作物のように鹿の角が土から頭を出してる光景は中々シュールです。
 出来上がった頃に、安く譲って貰えないか交渉にいくつもりです。
 

 まだまだ手つきは拙いですが、時折刃に打ち粉を滑らせるのが日々の楽しみです。